急速な高齢化が進む中、近年65歳以上の高齢運転者による交通事故の増加が社会問題化しはじめています。高齢運転者の交通事故は年齢に伴う身体能力の衰えに加えて、高速道路の逆走、ブレーキとアクセルの踏み間違いなど、認知能力の減退に起因するものも多いと考えられています。

運転者の認知能力減退への対策としては、免許更新時75歳以上の運転者に「講習予備検査」が実施され、認知症の疑いが濃厚で事故や重大な違反があった場合には免許証を返納する仕組みが運用されています。また一定の年齢以上の高齢運転者に免許証の自主返納を促す取り組みが行われている地域などもあります。

しかし、免許証の返納等の施策で高齢者の車利用を制限することにも課題は多く、電車、バス、タクシーなどの交通インフラが綿密に整備されている都市部を例外として、郊外や地方では日常生活での車の運転は不可欠で、高齢者ほど車移動の必要性が高いという側面も無視できません。高齢運転者を一方的に排除するだけではなく、高齢運転者が安全に運転を行うことができて、全ての人が安心に道路を利用できる車社会の構築が期待されます。
 わたしたちは、高齢化に伴う身体能力の衰えや認知能力の衰えを高齢者自らが正確に把握できる機会が提供され、高齢運転者個々の特徴に則した注意喚起と指導が行われること、同時に高齢運転者が陥りやすい誤った判断や誤動作等の特徴を把握し、これらに対応した社会システムが構築されることが必要と考えます。

そのために本研究会では、一定の年齢を越えた運転者を対象として、医学、心理学、及び工学等の見地から、高齢化に伴って変容する運転者の判断能力や身体能力に関する諸データ収集と分析等を行い、高齢運転者に即した安全対策のための基礎情報の整備に取り組んでまいります。また、自動車技術、社会基盤、社会システム等の道路交通に関係する各分野の組織、団体等と連携し高齢者が安全に運転するための課題等を分析し、改善策等の検討提言に取り組みながら、「高齢者の安全な運転」「高齢運転者の活性化」を目指してまいります。